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細川俊夫《遠い声》ディオティマ弦楽四重奏団が世界初演

2013年 4月26日付

細川俊夫の新作、弦楽四重奏のための《遠い声》が、5月11日、イタリア北部トレンティーノ=アルト・アディジェ州ボルツァーノの近郊、マグレにある歴史的ワイナリー「アロイス・ラゲーデル」が開催する「VIN-o-TON」コンサートシリーズにおいて世界初演されます。演奏は細川作品には定評のあるディオティマ弦楽四重奏団

ワイナリーの5代目にあたる現当主アロイス・ラゲーデル4世は芸術に造詣が深く、特に音楽を自らのワイン醸造のインスピレーションの源であるとして、その発表の場を長年に渡って提供してきました。「VIN-o-TON」コンサートシリーズでは、同時代の作曲家に毎年委嘱が行なわれ、新作が発表されています。細川は2013年のアーティスト・イン・レジデンスとして《遠い声》を作曲しました。

この作品はアロイス・ラゲーデルの他、ヴァイマル芸術祭(ドイツ)、ウィグモアホール(イギリス)、モンテカルロ芸術の春(モナコ)による共同委嘱を受けており、5月の世界初演を皮切りに、9月にヴァイマル、10月にロンドン、そして来年3月にモナコでそれぞれ各国初演されます。今年9月にはサントリー芸術財団主催の「サマーフェスティバル2013」において日本初演の予定です。

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©Kaz Ishikawa

細川俊夫
遠い声
弦楽四重奏のための

委嘱:ワイナリー・アロイス・ラゲーデル、ヴァイマル芸術祭、ウィグモアホール、モンテカルロ芸術の春による共同委嘱
演奏時間:14分


私にとって6曲目の弦楽四重奏曲であるこの作品では、極めてシンプルなメロディーが、音楽の背景に隠されている。その中心のメロディー(遠い声)は非常に遅いテンポの内で演奏され、それを構成する音たちは、解体され,一つ一つ異なった楽器法、奏法によって、異なった質感を持たせている。そしてその一つ一つの音は、音風景の柄となったり地となったりしながら、空間化されてゆく。聴く人は、それらの一つ一つの音の風景(ランドスケープ)を感じ取りながら、ゆっくりと音楽時間の庭園を歩いてゆく。

私たちの日常生活では,私たちの内なる声(歌)は日々の慣習のうちに隠されている。その隠された「遠い声」を聴きだそうとすること。その声を空間化して、音楽時間の内側に造形してゆくことが、私にとって作曲することである。

ボルツァーノの滞在で知り合ったアロイス・ラゲーデルは、自然との深い交感(コレスポンデンス)から、自然のエキス(本質)を、上質なワインのなかに醸成させてゆく。私はその方法、生き方に深い感動を持った。私の音楽も、自然との深い交感から出発して、自然の本質を音楽によって表現していきたい。

この作品をアロイス・ラゲーデルに捧げる。

細川俊夫

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VIN-o-TON 2013
2013年5月11日(土)19:00開演
カソン・ヒルシュプルン(ワイナリー・アロイス・ラゲーデル)
ディオティマ弦楽四重奏団
http://www.aloislageder.eu/en/node/1497