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細川俊夫《大鴉―メゾ・ソプラノと12の奏者のためのモノドラマ》世界初演

2012年 3月16日付

ベルギーでは毎年3月に現代音楽フェスティバル「アルス・ムジカ」が開催されます。フェスティバルの期間中は、ベルギーの国内各地でさまざまなイベントが展開されますが、今年注目されるイベントのひとつとして、細川俊夫の新作モノドラマ《大鴉》が3月17日にブリュッセルで世界初演を迎えます。

テクストはエドガー・アラン・ポーの同名の詩「大鴉」。細川はこのテクストを、近代的な人間の理性的世界の象徴である「私」の部屋に、この世のものならぬ「大鴉」が侵入することにより、その理性的世界が崩壊していく過程と捉えています。細川にとって「私」は「人間の理性的世界」に属するもの、「大鴉」は「その理性では捉えることのできない狂気の世界、理解できない自然の沈黙」に属するものなのです。ポーの作品をその2つの世界の関わりとして読み解くことによって、このモノドラマは作曲されました。メゾ・ソプラノの独唱は理性を崩壊させていく近代人であるとともに、細川作品に現れる多くの女性と同様、あの世とこの世、すなわちここでは「理性の世界」と「狂気の世界」の交感を可能にするシャーマンの役割も担っている、と作曲者は語っています。

昨年5月に同じくブリュッセルで世界初演され、大成功を収めた細川の3作目のオペラ《松風》において村雨役を務めたシャルロット・ヘレカントをメゾ・ソプラノ独唱に迎え、現代音楽の演奏には定評のあるユナイテッド・インストゥルメンツ・オヴ・ルシリンのメンバーがその周囲を固めます。作曲者自身がタクトを取るのも見所のひとつと言えるでしょう。

■作品情報:
細川俊夫
《大鴉》
メゾ・ソプラノと12人の奏者のためのモノドラマ

テキスト:エドガー・アラン・ポー『大鴉』
委嘱:ユナイテッド・インストゥルメンツ・オヴ・ルシリン
演奏時間:約40分
編成:afl(pic.fl.bfl).bcl(cl).tsax(asax)-tpt.tbn-perc(vib, 3tri, cym.ant, tam-t, 4bng, b.d, 4Japanese windbells(Furin), 4rins on timp, whip)-pno-strings(1.1.1.1.1)

初演(コンサート形式):2012年3月17日―ラ・ラフィヌリー(ブリュッセル、ベルギー)―シャルロット・ヘレカント/ユナイテッド・インストゥルメンツ・オヴ・ルシリン 細川俊夫指揮

■関連情報:
アルス・ムジカ 2012
公演情報