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細川俊夫《チャント》4月30日にドイツで世界初演

2009年 4月20日付

WDR(西ドイツ放送協会)の委嘱による細川俊夫の新作、チェロとオーケストラのための《チャント》が4月30日、ケルンのフィルハーモニーで、ロハン・デ・サラムのチェロ独奏、エミリオ・ポマリコ指揮ケルンWDR交響楽団の演奏により世界初演される。細川俊夫によるチェロ協奏曲は1997年の《チェロ協奏曲 -武満徹の追憶に-》以来2作品目となる。

・作曲者による《チャント》解説
このチェロ協奏曲の独奏部分、チェロのパートは、日本仏教の典礼音楽「声明」の歌い方から、影響を受けている。日本の1200年前から伝承された、天台、真言声明の独特の歌い方は、東洋のカリグラフィーのような毛筆で描かれたやわらかな曲線を持つ。私は1986年に、声明と雅楽のための《観想の種子》を作曲し、その時に声明に出会って以来、声明から様々な音楽的な影響を受け続けてきた。私の歌曲や、合唱曲、オペラにおける「歌」の形態ばかりか、器楽曲のメロディーの扱い方にまで、声明から影響を受けている。
 ほとんどの私の協奏曲作品と同じように、このチェロ協奏曲でも、独奏者は「人」、背景のオーケストラは人の内と外に広がる「自然」、「宇宙」を象徴している。人は歌い始め、それに宇宙(ユニヴァース)が、共鳴したり、反発したりする過程を経ながら、人は自分の歌を深めていく。そしてその歌は、やがて、自然のエネルギーの中に溶けあっていく。
 この作品は、数年前ロハン・デ・サラムと会話した際に、彼がスピリチュアルな世界に興味を持ち、死後の世界(チベットの死者の書)や霊的なことに関して話し合った経験から、生まれ始めた。世界の内側で祈りの歌を、チェロを通して歌っていく独奏者は、ロハンを想定して作曲した。ロハン・デ・サラムにこの作品を捧げる。


演奏会の詳細(WDRのウェブサイト)