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武生国際音楽祭 2019「新たな時代に ともに拓く創造の地平」

2019年 8月 30日付

Toshio Hosokawa / 細川俊夫

photo © Kaz Ishikawa

作曲家・細川俊夫が音楽監督、ピアニスト・伊藤恵がコンサートプロデューサーを務める「武生国際音楽祭」が、今年も福井県の越前市文化センターを中心に、9月8日から9月15日まで開催される。30周年を迎える今年は「新たな時代に ともに拓く創造の地平」というテーマが掲げられ、国際的に活躍する国内外の実力ある演奏家や作曲家が集い、クラシックからコンテンポラリーまで多彩なプログラムによるコンサートが予定されている。そのほか、作曲ワークショップ、夏季アカデミー(演奏家マスタークラス)が開かれる。

今年の音楽祭には、細川のオペラ《二人静》の世界初演でヘレン役を歌ったソプラノのシェシュティン・アヴェモ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に所属し、世界で最も注目されているコントラバス奏者の一人であるエディクソン・ルイス、世界のトップ・オーケストラや著名な指揮者から惜しみない賞賛を受け、今後が期待されるヴァイオリンのヴェロニカ・エーベルレ、コンテンポラリーな作品の演奏に定評があり、これまでにもこの音楽祭にたびたび出演しているフルートのマリオ・カローリ、スロヴェニア・フィルハーモニー管弦楽団のソリストから成り、2015年以来の来日となるスロウィンド木管五重奏団が登場する。加えて、細川が信頼を寄せる日本人演奏家たちも多数参加する予定で、30周年にふさわしい豪華なメンバーによる演奏が楽しめる機会となるだろう。

12日の伊藤恵プロデュース2「あふれる弦楽器の魅力」では、細川俊夫《リート IV》がエーベルレのヴァイオリン、伊藤のピアノで演奏される。《リート IV》は、2017年にグシュタードで開催されたSommets Musicaux de Gstaadの委嘱により、音楽祭の開催期間中、毎晩のコンサートで若手演奏家たちが演奏するために書かれた作品。エーベルレの瑞々しい感性がこの作品をどのように表現してくれるのか、期待したい。

13日の「細川俊夫と仲間たち」では、細川のソプラノ・サクソフォンのための《3つのエッセイ b》の世界初演、コントラバスのための《小さなエッセイ》の日本初演が行われる。《3つのエッセイ》はオーボエのために書かれた作品だが、今回、大石将紀(サクソフォン)との協働により、新たにソプラノ・サクソフォン版が完成した。《小さなエッセイ》はエディクソン・ルイスのために書かれた小品で、今年4月1日にトンヨン国際音楽祭にて世界初演されている。今回の日本初演も、世界初演を手掛けたルイスによって行われる。

15日のファイナルコンサートでは、赤坂智子のヴィオラ独奏による細川俊夫《哀歌》、そして、鈴木優人指揮の武生アンサンブルによって、モーツァルト《レクイエム》が演奏される。今回演奏されるモーツァルトの《レクイエム》は、鈴木優人による補筆校訂版。鈴木が首席指揮者を務めるバッハ・コレギウム・ジャパンによる演奏と録音のために、2013年に鈴木自身が手掛けた新しい版である。モーツァルトの自筆部分はそのまま採用し、原則的にはジュスマイヤーの補筆に則っているが、セクエンツィアのディエス・イレからコンフターティスまでの部分については、アイブラーの補筆を優先的に採用している。鈴木の解説によると、特筆すべき点として以下の2点が挙げられている。まず、モーツァルトが残したスケッチに基づいて、鈴木自身の手により新たに加えられた「アーメン・フーガ」である。ラクリモーザに続く短いフーガとして仕上げられ、セクエンツィアの最後に聴くことができる。もうひとつは、1800年に出版されたブライトコプフ・ウント・ヘルテル社の初版に基づき、セクエンツィアのトゥーバ・ミルム冒頭において、トロンボーンとファゴットのどちらも選択可能にしたことである。

ファイナルコンサートで演奏されるのは、鈴木の監修の下で金井勇が小編成の武生アンサンブルのために編曲した、武生国際音楽祭特別バージョン。先に挙げたトゥーバ・ミルム冒頭では、ファゴットでの演奏を採用している。鈴木優人自身の指揮により、説得力のある演奏が楽しめるだろう。

9月4日には、東京の同仁キリスト教会(文京区)で、音楽祭のプレイベントとして演奏会が予定されている。山本純子(ピアノ)と鈴木俊哉(リコーダー)が出演し、細川俊夫のピアノのための《エチュード I - VI》全6曲、リコーダーのための《線 I b》などが演奏される。

武生国際音楽祭2019
2019年9月8日(日)〜15日(日) 越前市文化センター(福井)ほか
音楽監督:細川俊夫/コンサートプロデューサー:伊藤恵
http://takefu-imf.com/