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B. ディーン《テスタメント》日本初演

2019年 4月 23日付

Brett Dean

photo © Bettina Stoess

6月5日、ヴィオラ・スペース2019 vol. 28「ヴィオラで巡る音楽の旅」の演奏会で、オーストラリアの作曲家ブレット・ディーン(1961〜)の《テスタメント》(2002)が佐々木亮(ヴィオラ)と桐朋学園の若手ヴィオラ奏者たちによって日本初演される。

テスタメント》(2002)は、ベートーヴェンの有名なハイリゲンシュタットの遺書にちなんだ作品である。この遺書が書かれた時期は、ベートーヴェンが耳が聴こえなくなる自らの運命に絶望し、葛藤のなかでそれを受け容れ、その後、交響曲「英雄」やラズモフスキー四重奏曲などクリエイティヴな創作期へと向かう重要な節目にあたる。ディーンの作品には、そうした苦悩と決心のアンビヴァレントな感情が入り交じったベートーヴェンの心の動きが映しだされている。

12人のヴィオラ奏者のためのアンサンブルというこの異色の編成は、十数年間ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のヴィオラ奏者だったディーンが、ベートーヴェンの音楽をともに演奏し、多くを学んだかつての仲間たちを想定して曲が作られたことによる。松ヤニを塗らない弓で奏でられる不確かにぼやかされたヴィオラの音色は、ディーンによれば、聴こえづらくなっていく耳の病気を暗に示唆しているという。また、自筆の遺書から想像される熱を帯びた筆音に着想を得て、筆跡から形どったというモティーフ(「言葉をもつが、声のない歌」〔ディーン〕)や《ラズモフスキー四重奏曲第1番》から部分的に引用されたフレーズなど、《テスタメント》はベートーヴェンへのオマージュともいえるだろう。

ブレット・ディーン
テスタメント(2002)
12人のヴィオラ奏者のための
Brett Dean: Testament - Music for twelve violas
日本初演
ヴィオラ・スペース2019 vol. 28「ヴィオラで巡る音楽の旅」
2019年6月5日[水]19:00 上野学園大学石橋メモリアルホール 小ホール
佐々木亮(ヴィオラ)と桐朋学園の若手ヴィオラ奏者たち
http://www.tvumd.com/program/detail/?program_id=84