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小出稚子《リヴァーサイド》世界初演

2024年 2月 21日付

小出稚子/Noriko Koide

2月23日、24日にNiterra 日本特殊陶業市民会館 フォレストホールで開催される名古屋フィルハーモニー交響楽団「第520回定期演奏会〈日本の地方文化の継承〉」において、コンポーザー・イン・レジデンス委嘱作品の第2作目となる、小出稚子の新作《リヴァーサイド》が、川瀬賢太郎指揮の同交響楽団により世界初演される。

近年、小出はこの世に存在するあらゆるものの「境目」はいかなるものか、ということに関心を持っている。2022年に《揺籠と糸引き雨》を作曲した際に、小出は以下のように述べている。

「ここ10年ぐらいことあるごとに境目のことを考えてしまう。生と死の境目、昼と夜の境目、他者と自分、正常と異常、うどんと素麺、子どもと大人、金持ちと貧乏、暑いと寒い、男と女などなど。考えるほど世の中に境目という境目は存在しなくて、そこら中に曖昧で不規則なグラデーションがただただ存在しているように思える。」(小出稚子)

《リヴァーサイド》もこうした思考錯誤の中で生み出されたもので、「生と死の境目」をテーマにした作品である。ともすると都会的な響きにさえ聞こえるタイトルが指し示しているのは、三途の川の河岸である。

人の死とは何なのか、三途の川とはどんな川なのか、人は死後、どこへ行くのか、あの世とこの世とは?作曲家の思考は、川の流れや水の姿を借りながら、どんどんと広がっていく。

川や水と言っても、オーケストラが生み出していくそれは、さらさらと流れるようなものではなく、答えのない問いに挑み続ける作曲家の思考そのもののごとく、時に粘り気の高い液体のようであったり、時に圧迫されるような息苦しさを覚えるようなものであったりする。最後にオーケストラが辿り着く静かな響きの中で、作曲家はそこに何を見い出すのか。

これまでユニークな楽器の使い方や音響を特徴としてきた小出の作品だが、今回はそれほど目立った特殊な奏法は見当たらない。ベーシックなオーケストラの音響から、また新たな一面を見せてくれる作品となりそうだ。

小出稚子
《リヴァーサイド》(2023)
オーケストラのための
Riverside
for orchestra
【世界初演】
川瀬賢太郎(指揮) 名古屋フィルハーモニー交響楽団
第520回定期演奏会〈日本の地方文化の継承〉
2024年2月23日(金・祝)18:45/2月24日(土)16:00
Niterra 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(愛知)
https://www.nagoya-phil.or.jp/2023/0120121326.html

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