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コンポージアム2017  ハインツ・ホリガーの集大成《スカルダネッリ・ツィクルス》日本初演

2017年 5月 1日付

Photo: Priska Ketterer


東京オペラシティ文化財団が主催する同時代音楽企画「コンポージアム」。今年は、現代の巨匠ハインツ・ホリガー(作曲家・オーボエ奏者・指揮者)を迎え、代表作《スカルダネッリ・ツィクルス》の日本初演がホリガー自身の指揮によって行われる。

現代最高のオーボエ奏者の1人であり、指揮者としてもベルリン・フィルハーモニーをはじめとする一流オーケストラと共演を重ねているホリガー。ヘンツェ、ペンデレツキ、リゲティ、カーター、シュトックハウゼン、ベリオ、武満など、同時代の著名な作曲家たちがホリガーのために曲を書いていることからも、その卓越した技量と音楽への造詣の深さが覗える。

フルート独奏、小管弦楽、テープ、混声合唱のための《スカルダネッリ・ツィクルス Scardanelli-Zyklus》(1975-1985/1991)は、スカルダネッリ(詩人フリードリヒ・ヘルダーリンが用いたペンネーム)の詩による無伴奏混声合唱(と任意の楽器)のための連作《四季 Die Jahreszeiten》(1975/78/79)と、フルート独奏、小管弦楽、テープ(と任意の女声)のための《スカルダネッリのための練習曲集 Übungen zu Scardanelli》(1978-91)、そしてフルート独奏のための《”(t)air(e)”》(1980/83)を組み合わせた24の小品で構成された大作で、演奏時間は150分を超える。独奏曲からオペラまで様々なジャンルにおいて音と言葉の限界を探求してきた、作曲家ホリガーの集大成といえる作品だ。

5月25日「ハインツ・ホリガーの音楽」における日本初演は、2014年の現行版初演を手掛けたラトヴィア放送合唱団(合唱指揮:カスパルス・プトニンシュ)とフェリックス・レングリ(フルート)に加え、結成20周年となる国内屈指の現代音楽集団アンサンブル・ノマドの演奏で行われる。特に、本作の軸となる無伴奏合唱では、演奏至難を極める8分音までの微分音を用いた特異な音響によって、境界に生きた異能の詩人ヘルダーリンによる言葉の世界が表現される。作曲者をして「この合唱団以外考えられない」と言わしめたラトヴィア放送合唱団の初来日演奏は聴き逃せないものになるだろう。

《スカルダネッリ・ツィクルス》の世界初演は、1985年にドナウエッシンゲンで、ホリガーの指揮によって、オーレル・ニコレ(フルート)、シュトゥットガルト・スコラ・カントルム(合唱)、南西ドイツ放送交響楽団(現バーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団)の演奏で行われた。その後、小管弦楽のための〈オスティナート・フネブレ〉(《スカルダネッリのための練習曲集》第11曲、1991)が追加されるなどの改訂が施されている。本作でホリガーは、1995年にイタリアの批評家賞であるアッビアーティ賞を受賞している。2014年に作曲者自身の手により現行版の形に楽譜が編纂され、同年のルツェルン音楽祭で8月30日、この版の初演が行われた。

ホリガーが審査員を務める28日の「2017年度武満徹作曲賞本選演奏会」では、応募された36カ国115作品の中からホリガーによる譜面審査で選ばれた4作品が演奏され、受賞作品が決定する。演奏はカチュン・ウォン指揮、東京フィルハーモニー交響楽団。ホリガーが審査員を務める(『審査員:ホリガーのコメント「2017年度武満徹作曲賞 譜面審査を終えて」』東京オペラシティ文化財団)。


コンポージアム2017「ハインツ・ホリガーを迎えて」

ハインツ・ホリガーの音楽《スカルダネッリ・ツィクルス》
2017年5月25日[木]19:00・東京オペラシティ コンサートホール
https://www.operacity.jp/concert/compo/2017/schedule/170525.php

2017年度武満徹作曲賞本選会演奏会
2017年5月28日[日]15:00・東京オペラシティ コンサートホール
https://www.operacity.jp/concert/compo/2017/schedule/170528.php