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細川俊夫《大鴉》《二人静》など カナダ初演

2019年 1月 7日付

細川俊夫 / Toshio Hosokawa

photo © Kaz Ishikawa

トロントのNew Music Festivalで招聘作曲家として細川を特集

2019年1月、カナダ・トロント大学が主催するニューミュージック・フェスティバルにおいて、招聘作曲家細川俊夫による作曲マスタークラスのほか、ポートレート・コンサートを含む3夜にわたるプログラムが組まれ、《大鴉》、《二人静海から来た少女》(舞台初演)、《サクソフォン協奏曲》、《悲歌エレジー》の4作品がカナダで初演される。

オペラ《班女》(2003-04)や《松風》(2010)をはじめ、細川はこれまでに能の戯曲を現代に読み替えたオペラを創作し、好評を博して来た。メゾ・ソプラノと12人の奏者のためのモノドラマ《大鴉》(2011)とオペラ《二人静海から来た少女》(2017)もまた、この系譜に連なる作品だ。

大鴉》はエドガー・アラン・ポーの原作を基に、能の視点を加味したモノドラマである。ここでは、超自然的な世界を体現する不気味な霊「大鴉」と亡き恋人レノーアを想う主人公が交わす不思議な交感や、大鴉に乗り移った恋人の亡霊の歌い語りを通して、人間中心の近代的な理性では掬いだせない不条理や狂気の世界が露わにされる。今回、本作に初めて挑むクリスティナ・サボー(メゾ・ソプラノ)のパフォーマンスに期待が高まる。

昨年12月、パリのシテ・ドゥ・ラ・ミュジックで世界初演された1幕のオペラ《二人静海から来た少女》は、ケルンでのドイツ初演に続く3度目の上演になる。平田オリザの原作は12世紀を舞台にした能『二人静』の現代版で、地中海の海辺に流れ着いた難民の少女(ヘレン)に静(能役者)が取り憑く。二人の女性の悲劇が約900年の時空を超えて交錯するこの短いオペラは、作曲家によれば《大鴉》の姉妹編として作曲された作品で、今回初めて一夜に2作続けて演奏されるのは理想的なプログラムである。シン・ワン(ソプラノ)と青木涼子の共演にも注目が集まる。

サクソフォン協奏曲》(1998-99/2018)とヴァイオリンと弦楽オーケストラのための《悲歌エレジー》(2015)では、いずれもソロ奏者を人間に、オーケストラを人間を取り囲む宇宙になぞらえて両者の対話が展開される。《悲歌》では、悲しみの歌が最後にオーケストラの響きと溶け合い、救済へと導かれる。この2作にも、人間を超えた大いなる存在に対する細川の眼差しが表れている。

このフェスティバルでは上記の作品に加えて、《ピエール・ブーレーズのための俳句》(2000)、《春の庭にて》(2002)、《ゲジーネ》(2009)、《ヴァルターのために―孤のうた II―》(2010)など、細川の室内楽作品が演奏される。

The 2019 New Music Festival

細川俊夫《大鴉
メゾ・ソプラノと12人の奏者のためのモノドラマ
Toshio Hosokawa: The Raven for mezzo-soprano and 12 players
[カナダ初演]
クリスティナ・サボー(メゾ・ソプラノ) グレゴリー・オー(指揮)ほか

細川俊夫《二人静海から来た少女
オペラ(1幕1場)
Toshio Hosokawa: Futari Shizuka The Maiden from the Sea
[カナダ初演・舞台初演]
シン・ワン(ソプラノ) 青木涼子(謡、能舞) ウリ・マイヤー(指揮)ほか

2019年1月17日[木]19:30 ヴォルターホール(トロント)
https://music.utoronto.ca/concerts-events.php?eid=2132

細川俊夫《サクソフォン協奏曲
Toshio Hosokawa: Concerto for Saxophone and Orchestra
[カナダ初演]
ウォレス・ハラディ(サクソフォン) アレックス・ポーク(指揮) エスプリ・オーケストラ
2019年1月20日[日]20:00 ケルナーホール(トロント)
https://www.rcmusic.com/events-and-performances/esprit-orchestra-presents-constellations

細川俊夫
トリオ》《エチュード》(ピアノのための)より
Toshio Hosokawa: Trio, from Etude (for piano)
垂直の歌》《恋歌 I》《古代の声
Vertical Song, Renka I, Ancient Voices
Camille Watts(フルート) Xin Wang(ソプラノ) Rob MacDonald(ギター)
Younggun Kim(ピアノ) Gryphon Trio the TSO
2019年1月21日[月]19:30 ヴォルターホール(トロント)
https://music.utoronto.ca/concerts-events.php?eid=2133&cDate=2019-01-21

武満徹《リタニマイケル・ヴァイナーの追憶に
Toru Takemitsu: Litani―In Memory of Michael Vyner
細川俊夫《ピエール・ブーレーズのための俳句―75歳の誕生日に
Toshio Hosokawa: “Haiku” for Pierre Boulez―to his 75th birthday
Justyna Gabzdyl(ピアノ)
2019年1月24日[木]19:30 ヴォルターホール(トロント)
https://music.utoronto.ca/concerts-events.php?eid=2286&cDate=2019-01-24

細川俊夫
悲歌エレジー
ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための
Toshio Hosokawa: Hika Elegy for violin and string orchestra
[カナダ初演]
春の庭にて》《ゲジーネ
Toshio Hosokawa: Im Frühlingsgarten, Gesine
ヴァルターのために弧のうた II―
Für Walter―Arc-Song II
2019年1月25日[金]19:30 ヴォルターホール(トロント)
ロバート・エイトキン(指揮) ニューミュージック・コンサーツ・アンサンブル
http://www.newmusicconcerts.com/styled/page18/index.html