Loading

Home>ニュース

ニュース

RSS Twitter Facebook

細川俊夫の新作オペラ《地震・夢》 シュトゥットガルト歌劇場で世界初演

2018年 6月 1日付

© Kaz ishikawa


細川俊夫の新作オペラ《地震・夢》の世界初演が、ドイツのシュトゥットガルト歌劇場で7月1日から幕を開ける。ハインリヒ・フォン・クライストの小説『チリの地震』を基に、ゲオルク・ビューヒナー賞受賞作家マルセル・バイアーが台本を手がけた作品だ。ヨッシ・ヴィーラー(演出)、セルジオ・モラビト(ドラマトゥルク)、アンナ・フィーブロック(舞台美術)ら、現代のオペラ・舞台芸術における一流のチームがこの初演の制作を担当し、シルヴァン・カンブルランが指揮を務める。

細川は、1998年のミュンヘン・ビエンナーレで初演された《リアの物語》以来これまで、エクサンプロヴァンス音楽祭委嘱作品《班女》(2004)、モネ劇場委嘱作品《松風》(2011)、ハンブルク州立歌劇場委嘱作品《海、静かな海》(2016)、加えて、室内オペラ《大鴉》(2012)と《二人静》(2017)の6つのオペラを作曲している。様々なプロダクションでの再演が重ねられている《班女》や、今年初めに待望の日本初演が行われた《松風》を中心に、現代オペラ作品として欧州での上演回数の多い演目となっており、特に近年、その評価を確固たるものとしている。

地震・夢 Erdbeben. Träume》(2017-18)はシュトゥットガルト歌劇場の委嘱作品。リブレットは、1647年のチリ大地震をモチーフとしたクライストの古典小説『チリの地震』を基に、詩人マルセル・バイアーによって新たに書き下ろされたもので、自然の脅威と恩寵、集団心理が生む恐怖と暴力、そして人間の愛と連帯を、高度に抽象化された言葉によって多層的に描き、悲劇の過去から未来へと託される希望についての独創的な物語に仕上がっている。

細川はこのオペラを、登場人物の少年が追体験する通過儀礼の旅としたうえで、「橋がかり」と呼ばれる廊下を渡って非現実と現実を往還する能の基本構造に触れ、作曲家としての自身の役割について、「音の橋がかり」を渡らせて聴き手をこの少年と同じ旅へと導くことだと述べる。これまでの細川のオペラと比べて、今作では大規模な合唱が特に目を惹くだろう。児童合唱を含む100人を超える合唱が、群衆の声、集団や個人の無意識など、登場人物の内外に広がる多義的な世界を表現する。

日本の聴衆にも馴染み深いシルヴァン・カンブルラン(同歌劇場音楽総監督)といえば、2001年にミュンヘンで細川のオラトリオ《ヒロシマ・声なき声》の初演を手がけ、同作を一気に細川の代表作へと押し上げた指揮者だ。そのカンブルランと今回のシュトゥットガルト歌劇場チームによる制作に、否応なく期待が高まる。Josephe(ソプラノ)とJeronimo(バリトン)、Elvire(メゾ・ソプラノ)とFernando(バリトン)という2組のカップル役を、エスター・ディアークスとドミニク・グロッセ、ソフィー・マリレイとアンドレ・モルシュがそれぞれ演じ、ストーリーの鍵となる扇動者Pedrillo役(テノール)をトーステン・ホフマンが務める。

制作の中心となるヨッシ・ヴィーラー(同歌劇場インテンダント)とセルジオ・モラビト(同チーフ・ドラマトゥルク)は、注目の演出を数多く手がけてきたコンビとして名高い。協働作品のなかでも特に、《ナクソス島のアリアドネ》(2001、ザルツブルグ音楽祭)、《ファウスト博士》(2005)、《アルツェステ》(2006)、《夢遊病の女》(2012)などが高く評価され、ドイツの専門誌『オペルンヴェルト』の年間最優秀プロダクションにも選ばれている。2012年の「フェスティバル/トーキョー(F/T)」で上演された、ヴィーラー演出によるエルフリーデ・イェリネク作《レヒニッツ(皆殺しの天使)》は、日本の演劇ファンにとっても記憶に新しい仕事ではないだろうか。《地震・夢》は、ヴィーラーのシュトゥットガルト歌劇場インテンダントとしての任期最後を飾る上演となる。

舞台美術と衣装を手がけるアンナ・フィーブロックもまた、欧州の一流劇場や音楽祭で目覚ましい活躍を続けている舞台美術家だ。美術と衣装の両分野でオペルンヴェルト誌の年間最優秀作家賞の受賞歴多数、クリストフ・マルターラー演出作品の舞台美術に加え、ヴィーラーやモラビトとの数々のコラボレーションでも知られる。

昨年4月にはオペラの制作過程を追うシンポジウムが東京都内で開かれた。細川、バイアー、カンブルラン、ヴィーラー、モラビト、フィーブロックはそれぞれに、被災地・福島各所を訪れた感想やオペラ制作への抱負を述べ、対話を通して多様性のなかに共通のヴィジョンを見出していくことの重要性が強調された。《地震・夢》は、悲劇に対する日本的な感性を反映しつつも、時代や地域を越えた普遍的な共感を呼ぶ作品となるだろう。


細川俊夫
地震・夢
オペラ(1幕18場)
Toshio Hosokawa: Erdbeben. Träume – Opera (One Act 18 scenes)

オペラ台本(ドイツ語):マルセル・バイアー
ハインリヒ・フォン・クライスト『チリの地震』による

世界初演
シュトゥットガルト歌劇場(ドイツ、シュトゥットガルト)

2018年7月1日[日]19:30/6日[金]19:00/11日[水]19:00/13日[金]19:30/18日[水]19:30/23日[月]19:30
https://www.oper-stuttgart.com/schedule/erdbeben-traeume/